
電気は貯めておくことができないため、供給と需要のバランスを一定に保つ必要があります。
その調整手段の一つが「デマンドレスポンス(DR)」です。
デマンドレスポンス(DR)は、電力の安定供給に貢献するだけでなく、報酬が得られたり電気代を抑えられたりと家庭にとってもメリットのある仕組みです。
しかし、「どのように電気の使用をコントロールすればよいのか?」と疑問に思う方も少なくないと思います。
本記事では、デマンドレスポンス(DR)の仕組みを解説し、HEMS(住宅用エネルギー管理システム)を活用した「機器制御型デマンドレスポンス」の効果を詳しく検証します。
「デマンドレスポンス(DR)」という言葉に聞き馴染みがない方は、以下のブログもご覧ください。
デマンドレスポンス(DR)とは?電力需給バランスを最適化する仕組み
デマンドレスポンス(DR)は、電力の需給バランスを最適化するために、電気の使用量(電力需要)を調整する仕組みです。
特に家庭においては、電力会社と連携して電気の消費を最適化することで、節電効果や報酬を得られるメリットがあります。
上げDRと下げDR – デマンドレスポンスの2つの基本パターン
デマンドレスポンスは、電力需要をいかに制御するかによって「上げDR」「下げDR」の2種類に分けられます。

上げDRは、余剰電力がある時間帯に電気の使用量を増やすことで、需給バランスを調整します。
Ex)蓄電池や電気自動車(EV)を充電することで電気の使用量を増やす
下げDRは、電力のピーク時に消費を抑えることで、電力需要を削減します。
Ex)家電の使用を抑えたり、蓄電池やEVに貯めておいた電力を使ったりして電気の買電量を減らす
行動変容型DRと機器制御型DR – 家庭で実施できる2つのデマンドレスポンス
家庭で実施できるデマンドレスポンスには、「行動変容型DR」「機器制御型DR」の2種類があります。

「行動変容型DR」は、 住人が手動で電力使用量を調整します。
「機器制御型DR」は、 スマートデバイスやHEMSを活用し、機器が自動で電力使用量を管理します。
【実証データ】行動変容型DR vs 機器制御型DR – どちらが効果的?
行動変容型DRは、住人が意識的に電力消費を調整する必要があるため、効果にばらつきが出やすいですが、機器制御型DRであれば、HEMSなどの自動制御技術を活用し、確実な電力需要の調整ができると考えられます。
では実際、自動制御の有無でどれだけDR効果が異なるのでしょうか?
以下の通り、上げDRの検証を実施したので結果をみてみましょう。
モデル実証の期間と概要
本検証では、家庭向けのHEMS「Nature Remo E」を活用し、「機器制御型DR」と「行動変容型DR」の効果を比較しました。



本モデル実証についての詳細は以下の記事をご覧ください。
検証結果 – 機器制御型DRの驚きの成功率とは?

| 買電量の上げ量の平均 [kWh/h] (電力会社計測の実績値) | 上げDR成功率 [%] | |
| 行動変容型DR | -0.10 | 32.3 |
| 機器制御型DR | 0.11 | 39.1 |
上の表をみると、行動変容型DRは、買電量の上げ量の平均がマイナスになっています。
これはつまり、電力需要を増やさなければいけない状況にもかかわらず、消費量が通常時より減少していることを示しており、上げDRとしては失敗に終わっています。
その一方で、機器制御型DRの買電量の上げ量の平均は全体平均でプラスに!
0.6kWh/h以上の需要創出に成功しました。
この結果から、家庭でデマンドレスポンスを実施する場合は、機器制御型DRの方が効果的であることが明らかになりました。
実践者の声から見えた行動変容型DRの課題と対策
検証終了後にとったアンケート調査にて、行動変容型DRに取り組んだ需要家から、「上げDRなのか下げDRなのかで対応が変わるため混乱した」「上げDRに参加することで電気代が高くなるのが不安」などの回答がありました。

これらの声から、行動変容型DRは、個々の理解度や意識によって効果が異なるため、成功率が低い傾向にあると考えられます。
その点、機器制御型DRであれば上げDRの知識量に関係なく需要創出が可能なので、DRの効果における優位性が高いのです。
需要家タイプ別の結果分析 – どんな家庭がDRで成果を出せるのか、逆潮流も考慮して検証
太陽光発電システム所有の有無で変わるDR効果
太陽光発電システムを持つ家庭と持たない家庭で比較を行いました。

機器制御型DRのなかで、所有している機器ごとに分類して出した結果が以下の表です。
【機器制御型DR】
| 需要家タイプ | 買電量の上げ量の平均 [kWh/h] (電力会社計測の実績値) | 上げDR成功率 [%] |
| 太陽光発電システム+ エコキュート | 0.21 | 42.1 |
| 太陽光発電システム+ エコキュート+ 蓄電池 | -0.13 | 19.9 |
| 太陽光発電システム+ エコキュート+ 電気自動車(EV) | -0.03 | 25.6 |
| 太陽光発電システム+ エコキュート+ 蓄電池+ 電気自動車(EV) | -0.69 | 11.7 |
| エコキュート | 0.57 | 73.5 |
太陽光発電システム所有者のデータをみると、ほとんどのグループにおいて数値がマイナスです。
これはつまり、太陽光発電システムを持つ家庭では、上げDRの効果が限定的であることを意味します。
一方、非所有者については、機器制御による電力管理の効果が高いことがわかりました。
太陽光発電システム所有者の逆潮流を考慮したDR効果
上記の結果を単純にみれば、太陽光発電システムを持つ家庭にとってはDRの方法に関わらず効果が期待できないと思われてもおかしくありません。
しかし、以下のような見方をすると、まったく効果がなかったわけではないことがわかります。
まず、太陽光発電システムを持つ家庭には、太陽光での発電量があります。
そのため、機器制御で創出した需要量でさえも自家消費でまかなえてしまうケースがあり、この場合上げDRの効果を期待することは難しいです。

しかし、もしも発電した電力を家庭で消費しきれなかったらどうなるでしょうか。
発電量を家庭で消費しきれなかった場合、通常電力会社に売ることになります。
(これを「逆潮流」といいます。)
太陽光発電システムを持たない家庭のように買電量を増やすことはできなくても、家庭での電力消費量を増やすことで”逆潮流の場合に生じる「売電量」”を抑えられれば、実質上げDRに成功しているといえます。

逆潮流を考慮した結果が以下の表です。
【機器制御型DR】
| 需要家タイプ | 買電量の上げ量[kWh/h] (電力会社計測の実績値) | 売買電トータルの上げ量[kWh/h] (Nature Remo Eで収集した数値) | 差分 | 機器制御できた日数 | 評価できた日数 |
太陽光発電システム+ エコキュート | 0.23 | 0.93 | +0.71 | 12/12 | 6 |
太陽光発電システム+ エコキュート | 0.14 | 1.25 | +1.11 | 10/12 | 2 |
太陽光発電システム+ エコキュート | 0.59 | 1.75 | +1.16 | 12/12 | 2 |
太陽光発電システム+ エコキュート | -0.14 | 0.06 | +0.20 | 0/8 | 7 |
太陽光発電システム+ エコキュート | 0.57 | 1.07 | +0.50 | 10/12 | 2 |
太陽光発電システム+ エコキュート | 0.20 | -0.32 | -0.52 | 12/12 | 9 |
太陽光発電システム+ エコキュート | 0.42 | 1.10 | +0.69 | 0/12 | 3 |
太陽光発電システム+ エコキュート+ 蓄電池 | 0.01 | 0.22 | +0.21 | 0/12 | 3 |
太陽光発電システム+ エコキュート+ 電気自動車(EV) | -0.02 | 0.03 | +0.06 | 12/12 | 12 |
太陽光発電システム+ エコキュート+ 電気自動車(EV) | -0.77 | -1.06 | -0.29 | 0/12 | 3 |
| 太陽光発電システム+ エコキュート+ 蓄電池+ 電気自動車(EV) | 0.19 | 1.02 | +0.83 | 3/10 | 1 |
「買電量の上げ量[kWh/h]」というのが逆潮流を考慮しなかった場合の数値で、「売買電トータルの上げ量[kWh/h]」が逆潮流を考慮した場合の数値なので、ほとんどのケースで「売電量」を抑えられていることがわかりました。
太陽光発電システムを持つ家庭の多くは、太陽光の発電量をなるべく余すことなく使えるように機器制御することで売電量を抑え、上げDRに貢献できていたのです。
おまけ:DRの成果を正確に評価する方法【専門家向け】
最後に、専門家の方向けにDR成果の評価について少しだけご紹介します。
DRの成果は、”通常時”よりも消費電力が上がったか(上げDRの場合)、もしくは下がったか(下げDRの場合)が重要です。
この”通常時の消費電力”、つまり比較するための「ベースライン(基準値)」を計算で求めます。
「ベースライン」は、直近の同じ曜日の実績値を基に計算します。
ただし、生活によって数値が左右される点がDR評価の難しいところです。
例えば、通常は浴室乾燥機を利用している需要家がDR当日にたまたま家におらず利用しなかっただけで1kW需要量が異なります。
そのため、逆潮流を考慮した結果では機器制御ができているにも関わらず、データ上需要量が創出できていないように見えるなどの事象が起きることがあります。
逆潮流を考慮したベースライン算出の裏側 – DR評価の正確性を高めるには
まず、機器制御型DRに取り組んだ需要家のうち、通常時の消費電力「ベースライン」が0kWhとなっているケースを取り上げたのが以下の図です。
太陽光発電システムを持つ家庭の方がベースラインが0kWhとなっているケースが多いことが一目瞭然ですね。

この理由は、太陽光発電システムを持つ家庭は、今回の上げDR発動時間帯である10:00~14:00において日常的に発電量が消費電⼒量を超えており、電気を買っていないからだと思われます。
以下の図は、太陽光発電システムを持つ家庭の10:00~14:00(DR発動時間帯)における発電量と消費電力量を表しています。

上げDR中のため、各家庭にあるエネルギー機器を積極的に使ってこの電力量になっていますが、発電量よりも電力需要の方が少ないことがわかります。
この図には家庭全体の電力消費量は示されていませんが、一般的に昼間の時間帯の消費電力は図にあるようなエネルギー機器の消費電力よりも小さくなる傾向にあります。
以上のことから、太陽光発電システムを持つ家庭では発電量が消費電力量より多くなっており、買電量が0になるケースが多数出ているのです。
機器制御を⾏って電⼒需要を創出したとしても、自家消費が増えるのみで買電は発生せず、数値上成果が上がっていないようにみえてしまいます。
そこで、以下のような方法で太陽光発電システム所持者の上げDR成果を算出してみることにしました。

まとめ:家庭での最適なデマンドレスポンスの実践方法
本ブログで紹介した検証結果から、家庭向けデマンドレスポンスには「機器制御型DR」が効果的であることが明らかになりました。
Natureでは、本検証でも使用したコンセントに挿すだけでOK・取付工事不要のHEMS「Nature Remo Eシリーズ」を展開しております。
デマンドレスポンスにご興味がありましたら、ぜひお試しください!
家庭でのエネルギー管理が今後の持続可能な社会づくりに欠かせない要素となっていく中で、Natureは、より多くの家庭でのDR実現を目指していきます。

